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INAX上野緑工場で新たな労災隠し発覚

kage

2010/01/06 (Wed)

――05年・08年に ほぼ同様の事故・労災隠し――

■指2本切断の大ケガが「切り傷」!?
ユニットバス製造大手のINAXの上野緑工場で
日系ブラジル人男性(34歳)が2008年9月12日に
指2本を切断する大ケガを負ったにもかかわらず
労災の届出がなされていないとして
2009年12月15日、
三重県の個人加盟制労働組合
ユニオンみえ「連合」構成産別・全国ユニオン加盟)が
三重労働局に調査の申し入れを行なった。

INAXは当初、報道機関などに対し、
けがは「切り傷」で
労基署への報告義務がない「不休災害」だと認識していたなどと
説明していた(朝日新聞名古屋版12月16日)。
しかし、
その後INAXは説明を一転させ、
朝日新聞の取材に対し、
本件が労基署への届け出が必要な休業をともなう労災だったと
認めた(朝日新聞名古屋版12月27日)。

同工場では2005年8月12日にも、
ほぼ同様の事故が起きたにもかかわらず、
この際INAXの工場課長が
下請け会社の社長に労災隠しを指示していたことが
INAXの持ち株会社である
住生活グループの調査で
すでに明らかになっている(中日新聞12月10日)。
ユニオンみえは1月4日、INAXに対し、
上野緑工場で繰り返される労災事故や労災隠しの
真相究明及び再発防止などについての
話し合いの開催を要請した。

■「ただ出社するだけ」を何ヶ月も
ユニオンみえによると、
日系ブラジル人労働者・Mさんは
INAXの下請け会社・小端工業から
仕事を「再下請け」された
エフケン工業株式会社(代表取締役:安田憲功)を通じ
INAX上野緑工場で2006年6月23日から働いてきた。

2008年9月12日午前4時30分ごろ、
Mさんはユニットバスの樹脂生地を切断する機械に
左手を巻きこまれ、
指2本をほぼ切断するような重傷を負った。
このことは、
Mさんの治療に当たった名張市立病院の医師が
「左示指・中指不全切断、左母指環指切創」との診断書を
出していることからも明らかである。
すぐに指をくっつけた結果、
何とか指はつながったが、
Mさんは5日間入院し、
8週間の治療が必要であると診断された。

退院から約1週間は自宅待機状態だったが、
事故から約2週間後にエフケン工場の要請で
INAX上野緑工場に出社。
仕事はせず、
「ただ出社するだけ」の状態を
2009年4月28日まで続けていたと
Mさんは証言する。

当時Mさんは、
樹脂生地の両面を保護しているビニールを巻き取る
下部のローラーに生地も一緒に巻き付いたので
生地の自動送りを止めるために
手動スイッチを「入り」に切り替えて機械を停止させ、
生地を左手で持ち上げ
右手でインチングボタンを押しながら
生地を引っ張り出していたということだ。
その後、
右手で手動スイッチを「切り」に切り替えたところ
生地を押さえるプレスが降りて左手が挟まれ、
切断刃物も稼働しはじめたので
右手で刃物台を押さえたが、
機械の力に負けて指2本がほとんど皮だけでつながる
「不全切断」の受傷を負ったと
Mさんは証言している。

朝日新聞の報道によれば、
当時、INAX上野緑工場の係長が病院に駆けつけ、
医師から「入院が必要なけが」と
けがの具合を確認していたという。
また、
同工場の安全防災課長が事故当日に
「指2本の腱と血管が切れたが、
 手術で縫合した」と
本社安全防災推進室に社内メールで連絡、
社長ら幹部らにも情報が伝えられていたという。
にもかかわらず同課長は、
労基署への届出義務がない「休業ゼロ」の事故として
本社に報告していたというのである。

■孫請け会社・「INAXに迷惑」と労災使わず
孫請け会社・エフケン工業は
Mさんのケガの治療に労災保険を使わなかった。
エフケン工業は労災保険を使わなかった理由について
朝日新聞の取材に対し、
「『INAXに迷惑がかかる』と思い、
 労災保険も使わなかった」と説明しているという。

INAX上野緑工場では2005年8月にも、
下請け会社の従業員がユニットバスの浴槽をつくるプレス機に
左手を挟まれ、
指2本を骨折する重傷を負い、
約1ヶ月仕事を休む労災事故が起きていた。
にもかかわらずINAXの工場課長は下請け会社の社長らに、
これを報告しないよう指示。
労災隠しがINAX課長の指示で行なわれたことが
すでに明らかになっている。
このような労災隠しが行なわれれば、
原因究明や再発防止のための
充分な措置が講じられるはずもなく、
ユニットバスの製造工程で
左手指2本に重傷を負うというほぼ同様の事故が
再発したものと考えられる。
また、
「2005年の際のINAXの対応からは、
 2008年の労災隠しについても
 INAXの関与が本当になかったのかと
 疑われてならない」とユニオンみえは主張している。

■「多重請負」で多発する労災事故
一般にこのような「多重請負」状態にある場合、
指揮命令系統や労働安全衛生の責任の所在が
あいまいになり、
労災事故につながりやすいことはよく知られている。
Mさんはエフケン工業の外国人労働者から
初期の稼働運転方法を口頭で教えられるだけで
現場作業につき、
上司はポルトガル語を話せないので
日本語と身振り手振りで指導するという有様だったということだ。
切断機の停止方法も、
手動スイッチを「入り」にするとの指示がされていたという。

ユニオンみえは
Mさんの直接の雇用主であるエフケン工業にも
10月22日、
労災及び労災隠し等についての団体交渉の申し入れを
行なっているが、
エフケン工業は10月26日付で、
具体的な説明をほとんどしないまま、
ただ
「エフケン工業に非がないと思われるため、
 交渉する余地はないと考えられる」として
これを拒絶するFAXをユニオンみえに送りつけてきている。

会社側に「非がない」と本気で考えているのであれば、
正々堂々と労働組合との団体交渉に応じ、
そこできちんと主張すればいいだけである。
組合側の主張もきちんと聞かないうちから
会社側に「非がない」と主張して
交渉のテーブルに着くこと自体から逃亡するというのは
一体どういう了見なのか。

■本当に使用者に「非がない」のか
エフケン工業は
「エフケン工業に非がない」と言い切っているが、
Mさんの証言によれば今回の労災事故は、
素材の生地が柔らかいために
ビニールを巻き取るローラーに生地まで巻き付き、
それを正常に修復しようとして負傷したというものだ。
Mさんによると、
柔らかい生地が下のビニール巻き取りローラーに
巻き付くという現象は以前からたびたび起きていたという。
Mさんは日本人上司に
「材料が柔らかいので交換してほしい」と
伝えていたということだが、
「替わりの材料がないのであなたがやりなさい」と
言われていたそうだ。
入社当初は日本人上司が
現状復帰していたとのことであるが、
しばらくすると復帰作業を
Mさんに指示するようになったということである。

トラブルシューティング操作方法についても
ポルトガル語での掲示は現場にはなく、
教育や指導もなかったとのことだ。
この切断機の正しい停止方法は明らかではないが、
「手動スイッチに切り替える」というのは
一つ操作を誤れば突然機械が稼働してしまう
危険な停止方法であることは間違いない。
この機械はメインスイッチが操作盤に装備されており、
非定形作業時に修理やトラブル処理などの作業を
行なうときは、
本来、機械作業責任者が安全装置に切り替え
キースイッチを設け、
当該キースイッチを保管するものを定めて
保管させなければならないはずである
(労働安全衛生規則第134条3項及び134条の3)。
切断機のキーは常時付いたままになっていたのであるから、
この切断機操作作業は
安全配慮義務や安全教育義務にもとる
危険な作業であったことになる。
使用者側に「非がない」などとは
とても言えるようなものではない。

■「労組との話し合いは会社にもプラス」
直接の雇用主であるエフケン工業が
労組との交渉を一切拒絶している現状からも
ユニオンみえは、
INAX上野緑工場内で繰り返される
下請企業従業員の労災受傷や労災隠しの
真相究明と再発防止、
そして被災者に対する確実な補償の実施のために、
INAXとの話し合いを希望している。
「当労組には労災防止の専門家もおりますので、
 組合と再発防止について話し合うことは
 INAXにとってもかならずプラスになるはずです」と
ユニオンみえはコメントしている。
(インターネット新聞「JANJAN」より
 1月6日から加筆転載)


【参考記事】
「労災隠し」問題でINAX、労組との話し合いを拒絶
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